高性能林業機械の現状と生産性の向上

高性能林業機械の現状と生産性の向上

はじめに

当社は旧中島飛行機の疎開工場をルーツとし、1949年に開発したY‐22型集材機に始まり、林業用トラクタ、自走式搬器、グラップル、プロセッサなど、当時の伐出作業に革新をもたらす数々の最新鋭機を世に送り出してきました。

Y-22 集材機

高性能林業機械に於いても、フェラーバンチャ、ハーベスタ、プロセッサ、スキッダ、フォワーダ、タワーヤーダ、スイングヤーダなどがありますが、当社は全てをラインナップしている林業機械の総合メーカーです。(スキッダは生産終了しています。)

機械化の現状

当社高性能林業機械の歴史は昭和63年、国内初のグラップルプロセッサGP-30の開発まで遡ります。当初は海外機の技術導入から始まりましたが、お客様の声を取り入れて改良を重ね、伐出現場で使い易い日本型のプロセッサが完成しました。それまでのチェーンソーで行う手作業は非常に危険を伴うものでしたが、機械化により危険度が少なく、生産性も10倍近くと飛躍的に向上しました。

続いて、フォワーダやタワーヤーダなど、各種の高性能林業機械の開発に取り組みました。

日本は地方により気候や地形が異なるため、森林(植生)に多様性を持ち、これが多様な作業システムを生むことにつながります。対して、林業先進国と呼ばれる北欧や中欧の国々では、それぞれ共通の地域特性を持つため、CTL(Cut to Length;短幹集材)などの作業システムが早期に確立されました。当社は日本全国で作業されるお客様のご要望に応えた結果、幅広い製品ラインナップを持つに至りました。この様なメーカーは海外にもないと自負しております。

現在は、それらの開発が一通り終了し、作業システムの構築と実践、そして改良・改善の局面に入っています。

一方、造林の地拵え、植付、下刈りの各工程は人力作業が主体で、採算性悪化と労働力不足の要因となっています。豊富な日本の森林資源を活用し、次世代に残すためには伐採後の再造林を促進する必要があります。これらを解決するためには機械化が不可欠となっており、グラップルレーキやロータリークラッシャーなどの造林機械にも力を入れて参ります。

生産性を高めるには

また、日本林業の課題として生産性の向上がありますが、要因として我が国特有の条件、急峻な地形や路網の未発達など、一朝一夕に解決できるものではありません。そこで、機械で何が出来るかという事を考えてみたいと思います。

一般に生産性の単位としては㎥/人・日が使われますが、この単位に注目すると生産性を上げるには二つの方法が考えられます。

一つは計算の分子を大きくする、つまり生産量を増やす方法です。しかし、手作業からの機械化ならいざ知らず、ある程度林業機械が行き渡った現状では細かな改善を積み重ねたとしても、例えば生産量をいきなり倍増させるのは容易なことではありません。

もう一つの方法は分母を小さくする、即ち掛かる人員を減らして省人化する事です。例えば二人作業を一人作業に出来れば、それだけで生産性を倍増させる事ができます。少々、極端な話だったかもしれませんが、労働力不足を考えても機械化の方向性としては、省力化・省人化が必要と考えております。

ここで、生産性の計算例を紹介いたしますと、作業システム全体の生産性は各工程の加重平均となります。図の伐倒―集材―造材のシステムでは、全体の生産性は3.2㎥/人・日となり、最も低い生産性4㎥/人・日を越えることはできない計算結果になります。3工程で単純に1/3にならないため、ボトルネックをできるだけ作らない事が大切です。

また、人員のシフト、機械の稼働率向上、そして工程の削減が最も重要となります。

最新の林業機械

令和2年度林野庁の補助事業で開発を進めている架線式自動集材システムは、ラジコン集材機に架設したエンドレスタイラー式架線に回生充電駆動するグラップルを吊り下げ、AI画像認識とステレオカメラの立体計測により集材木を自動的に見つけて、掴んで(荷掛け)搬送し荷下ろしの集材サイクルを無人化する新しい取り組みです。目視による遠隔集材も一人で簡単な操作で実施でき、AIと組み合わせたオンライン集材も期待できます。

架線式グラップル

【イワフジ工業㈱】