高性能林業機械の活用による最新の採材システム

木材は採材の仕方によって価格が変わります。最適な採材プランに導いてくれる高性能林業機械の新しい採材システムについて、日立建機日本株式会社にまとめていただきました。

令和3年度各県年間伐採利用可能量及び素材生産量

◆はじめに

山形県の森林面積は、県土全体の72%を占める67万㏊で、全国でも8番目の広さを誇る国内有数の森林資源保有県であります。

しかし、素材生産量は東北各県と比較してもまだまだ少なく、推定伐採利用可能量に対しても半分程度で推移しているものと想定されます。

 また、高性能林業機械の保有台数についても、10年前より大幅に増加してはいるものの、近年は少し停滞しているように見受けられます。

 ただし、これらのことは裏を返せば他県よりも伸びる余地が沢山あるということであり、私共も期待せずにはいられないところであります。

◆長年開発提供し磨き上げた高性能林業機械への適応力

 日立建機では、1980年頃から油圧ショベルをベースマシンとした林業仕様機のラインアップを揃えてきました。林道開設、伐倒、集材、運搬など、林業の現場ではさまざまな専門作業が求められるため、その現場に最適な10tクラスを中心に、大型足回りの採用や最低地上高のアップ、キャブ前面ガードやエンジンメッシュガードなど40年に亘る知識や経験を踏まえ、日立建機ならではのアイデアを林業仕様機に投影してきました。

 ベースマシンとなる油圧ショベルの大きな役割は、グラップル、プロセッサ、ハーベスタなどのアタッチメントの性能を最大限に引き出すことです。他社製のさまざまな特性のアタッチメントに対応し、その性能が発揮できるよう、長年のノウハウから導き出されたものを織り込みながら林業仕様機を作り上げてきました。

 なかでも、伐倒から枝払い、測尺、玉切りといった一連の作業を行える「ハーベスタ」との組み合わせは、林業の生産性を大きく向上させる高性能林業機械の一つであり、そのハーベスタをプログラムソフトによってシステム制御し、効率的な生産を実現させるのが、フィンランドのワラタ社製ハーベスタを用いた「I Loggerバリューバッキング」であります。

◆「I Loggerバリューバッキング」日本市場にマッチしたハーベスタ制御システム

 これまで海外から持ち込まれた林業アタッチメントは日本の林業現場には合わないと言われる事も多々ありました。北欧などの林業先進国で設計製造されているアタッチメントの性能は高い評価を受けていたものの、ソフトが日本向けに対応しきれていなかったり、輸入業者が調整をせずに提供したことがあったのも一因のようです。

 例えば、伐倒した木をどこまで商品に出来るかは、材として利用できる部分の「材積」によりますが、その材積集計方法が北欧と日本では違うにもかかわらず、この違いを適合させる調整がほとんどなされていなかったのです。これに対し、日本市場向けに調整された新しい採材システムが林業ICTに該当する「I Loggerバリューバッキング」なのです。

 更に加工精度を高めるキャリブレーション。I Loggerに入力されたデータを基にハーベスタで採材を一気に行い、その後実際に採材された材を測り数値を確かめます。その誤差を少なくするための細かな調整がキャリブレーションなのですが、加工精度の確認だけでなく、同じ樹種でも伐採地や季節によって皮の厚みなどが変わってくることに伴う誤差調整でもあります。

◆送材が速く枝払い能力も高い日本の林業にも最適なシステム

 林業プロセスを効率化して生産性を上げ、1本の木から得る利益を最大化する「I Loggerバリューバッキング」。I Loggerのモニターには、まず伐倒後のファーストカット時に、その木に最適な採材プランが提示され、最初の玉切りの長さに達すると過去の木材情報から全木の長さを予測し、採材プランを自動更新して利益の最大化を図ってくれます。

また、用途別に複数の価格設定が出来るので、樹種や用途が変わってもフレキシブルに最適な採材プランに導いてくれます。

 樹木は葉先にいくにつれ細くなりますが、例えば樹木の直径が22㎝で6mの長さで玉切りできると予測したものの、指定した直径に満たない場合は、次に高く売れる3mで切りにいってくれます。つまり、1本の木の価値をオペレータの技量にかかわらず、常に最大化出来るのです。もちろん、玉切りする長さはオペレータの判断で変えることも出来ます。送材スピードが速く、枝払い能力も高く、速く動いても長さの誤差が非常に少ないので、まさに日本の林業に最適な採材が出来る林業システムのパッケージなのです。

市場価格データを随時入力更新することで、最新の市場価格に基づきその都度材の価値を計算し、理想の切断プランを自動的に立ててくれるこの林業ICT機能を備えた仕様機、販売はもちろんですがレンタル機も用意しており対応出来ますので、是非一度お試し下さい。

〔山形県森林協会〕