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次世代林業サプライチェーンの最前線

◆次世代社会とは何か

次世代社会のキーワードは『持続可能』、『循環型社会』です。気候変動の影響と見られる自然災害が多発し、経済活動に対して環境や社会に対する責任が問われ、経済性を保ちながら環境、社会をよくするための実効性のある改善策が求められるようになりました。
実効性のある改善策というのは、具体的にはシェアリング、削減・再利用、二酸化炭素抑制・削減という観点から、森林・海洋・農産物資源をデジタル、ロボット、バイオテクノロジーの活用などによって革新的な形で使っていくこと、を意味しています。
林業にはまだ波が来ていませんが、世界的にはこれらの技術開発や取り組む企業に投資の波が押し寄せており、ビジネスの中で社会課題を解決していこうとする姿勢が、企業の競争力になるという新しい潮流が生まれつつあります。

◆次世代型産業のコンセプト

次世代型産業のコンセプトとして、情報通信技術(ICT)を利用した標準化とプラットフォームの整備、イノベーションによる新たな製品や技術の開発が共通認識になってきました。本稿では、標準化とプラットフォーム整備の観点から、林業サプライチェーンの次世代を概観します。

◆プラットフォームとは
プラットフォームとは、人と人をつなぐ場所のことです。サプライチェーンの中のプラットフォームは、買いたい人と売りたい人をつなぐ場所ということになります。これまでの林業では、たとえば素材生産会社と製材会社など、物流でつながる会社同士が市場などの物理的なプラットフォームを通じてつながってきました。このプラットフォームを拡張することが次世代型林業の入り口です。たとえば森林所有者とハウスメーカーなど、林業物流の両端にいる者同士でも売買ができるようにするようなイメージです。

◆林業プラットフォームの役割
林業プラットフォームの役割は、未利用木材のマッチングと、物流最適化の2つだと考えます。これらを果たすためには、プラットフォームに多くの参加者を募らなければなりません。多くの参加者を募るには、透明性、品質保証、すぐに始められるというハードルの低さが重要です。
そのために、データ規格と通信の標準化が必要不可欠です。

◆データ規格と通信の標準化
データ規格と通信の標準化には林業機械に搭載されるICTが役に立ちます。現在、林業機械で取得できる情報は材積、径、長さで(写真1)、これは国際的に実質の基準として用いられているStanForD2010規格があります。
一方、目の細かさや曲がり、色などの品質基準はないようです。これまでは人の目で測定してきましたが、機械で計測できるデータと基本林分データなどから実用に耐える程度に予測する人工知能開発は検討の余地があると思います。
プラットフォームへの容易なデータ送信は、根本的には事務作業の省力化であり、間接費削減と時短化に貢献し、収益性UPと働き方改革、そしてイノベーションにつながる可能性があります。

◆次世代型サプライチェーンの概念
それでは、情報共有を伴うサプライチェーン(以降、簡便のため次世代型サプライチェーンとします)はどのようなものでしょうか。従来型サプライチェーンと次世代型サプライチェーンの概念を図 1に表します。
従来型サプライチェーンでは、市場での検知によって需給マッチングが行われてきました。近年では、多品種を扱える大型製材所の出現により、従来型サプライチェーンの改良型である直送システムも発達し、市場での荷の積み下ろし等がなくなるため、輸送費用と中間経費の削減が期待できます。

 

◆次世代型サプライチェーンの特徴
一方、次世代型サプライチェーンの特徴は、長期間の需給契約と情報集積のためのデータセンターです。ハーベスタでの造材時における需給マッチングはより正確に言うと、長期需給契約を交わしたうえで、データセンターに送られた需要情報と高性能林業機械によって取得した生産情報に基づいて、伐採計画や採材方針、配送計画を最適化するということです。所有林分や購入立木の状況に応じて、価格と品質、また需要場所の異なる複数品目について(写真2)需給契約を交わすことで、林分状況に応じて価値を最大にするSCMを構築することができます。

◆日本での適応
最大価値採材を行うためには、リアルタイムの需要情報と供給情報が必要であり、これにはサプライチェーンの川上から川下までの関係者が情報共有に同意している必要があります。
最適化は規模が大きく、期間が長くなるほど難しくなりますが、一方でその恩恵も大きくなります。裏を返せば、規模や契約期間が小さければ恩恵は少なく、システムを導入しても導入費用の方が高くついてしまう可能性もあります。
したがって、日本において現実的かつ、効果的な規模や契約期間を模索する必要があります。また、システムは日進月歩であり、低廉なシステムを探していくことも重要です。

◆おわりに
林業は地域に根ざす産業ですが、木材は国際競争下にある商品です。サプライチェーンの上流と下流にある意識のギャップを埋めながら、プラットフォーム作りを進めることが、『持続する循環型社会』作りに貢献するような、次世代林業推進の道の一つであろうかと思います。

 

       

秋田県立大学木材高度加工研究所 特任助教 吉田 美香